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お気遣いに?
「ふーん」
アスカは二度と離すまいと持っていた籐編みのひしゃげた手さげかごをテーブルに置き、ナギラが引いた椅子に腰掛けながら、応接室では余裕のなさから気にも留めなかったことに関心を寄せていた。食堂からもガラス戸越しに裏庭が望めていた。さしたる特徴のない庭だが、よくよく眺めると、背後に迫る深奥にして神聖な森との格調高い調和に気付かされる。それはまるで戸枠を巨大な額縁にしたような絵画を思わせた。そうした驚きに見開く瞳が次に捉えたものは、別の部屋へと繋がる細い通路だった。
「あの奥は?」
ナギラは台所と答え、調理器具の他にも、最新式のレンジや冷蔵庫が揃えてあると続けた。アスカにすれば食事を取らない男には無用に思える話だ。それでつい精霊印の怪しげな水の保存場所にしては豪勢な設備と、皮肉っぽく言葉にしてしまった。するとすぐに、ほんの微かに眉を顰めたナギラに、こう返された。
「ご領主様のお気遣いにございます」
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