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通いにって?

「うーん」  風が無償で運び屋紛いなことをしているとは驚きだが、そうなるとアスカがこの屋敷から抜け出すのも大して難しくないように思えて来る。家に運べと頼んだのなら、風はそうしてくれるだろう。しかし、そこに問題がない訳ではなかった。  無償といっても善意とはならない。精霊が金銭に興味がないだけのことで、対価はしっかりと頂いているはずだ。男を見てもわかることだ。その美貌を鑑賞物として捧げたに違いない。実際、自然界の精霊が男を贔屓にするさまは異常と言えた。  それがアスカだとどうなるのか、風はアスカがいると知ればすぐに現れるが、それもからかって遊ぶ為にだ。安易に頼めば、遊びと称する責め苦に引きずり込まれることになる。やはり危険は冒せない。アスカは頭の隅にとどめるだけにして、ナギラの話で知れたことへと何気なく話題を移した。 「で、あんたも通いにって?」 「お陰様で、屋敷が建て替えられました折に、自宅を持てました」

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