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騒がしい声が?
強靭な風圧を土台にして作られた雲に、無理やり立たされたアスカからすると、たとえそれが移動手段にもなると理解をしようが、ナギラ程には喜べない。相手は風だ。油断してはならない。その思いにむすっとしたからなのか、ヤヘヱが無粋な奴とばかりに陽気な笑いをわざとらしく響かせた。
〝ぐひひひひっ〟
会話に差し障りない程度の酔いに煌めきを火照らせるヤヘヱの喋りは、しらふの時以上に小憎らしい。つまり大いに楽しんでいるのだ。だからこそ、流れ行く時間に逆らって生きるしかない男を慰めもしたのだろう。
〝ナギラなじょ、まじゃまじゃじゃ、わじゃぐじめなじょ……〟
「ほぅ、へぇ」
男に如何に大切にされているのかを、怪しい口調で綿々と続けるヤヘヱに、アスカは気のない返事で応えてやった。そうしながらアイスティーのグラスにストローを差し入れ、溜め息代わりにチューっと音を立てて飲む。と、その時だ。言い争う騒がしい声が廊下から響いて来た。
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