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許可なく侵入?

「木偶どもがっ」  アスカの思いをその一言で片付けたナギラの声音には凄みが利いていた。それがアスカには嬉しくてならなかった。判断の正しさもだが、ナギラを武闘家と思ったことに間違いがなかったと知れたからでもある。穏当ながわに惑わされた訳だ。それでアスカもややきつい口調で話の先を促すことにした。 「で?」 「ヌシには気に入らないのです、ご領主様が深奥にして神聖な森の中央部に住まわれますのが、それ故、建て替えの際に、車での往来が可能となるよう道路工事を命じました、時代の変化に合わせよとのことでしたが、人間の為などではございません、ご領主様への嫌がらせであります」  深奥にして神聖というだけあって、この森は本来、居住するには不向きな場所とナギラは続けた。自然界の精霊に寵愛される男だから出来ることだとも語った。そうした森の中央部を住み処とした男の真意は明らかだ。何人たりとも許可なく侵入するのを禁じたことになる。

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