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アスカを指差し?
「てか、あんたらはよ、あいつの……」
アスカは誰を指しての台詞なのかをそれとなく伝えようとして、主人室の方に軽く手を振り、ほんの少し声音を低めてから続きを口にした。
「野郎の仕事が終わるのを待ちたくねぇ、んだよな?なら、俺が助言ってのをしてやる、とっとと失せろや、ってな」
二人には何を言われたのかがわかっていない。アスカに追い立てられるままに後ずさっていたのだ。頭の働きも鈍そうに見える。しかし、アスカが思わせぶりに主人室へと手を振ったせいで、二人共々にフード付きマントに隠されていたロングドレスに目を留め、今更ながらでも迫り来る者の正体に気付けるくらいに賢くはあった。
「おまえ!」
モンスター居住区の新参者で、人間相手に占いしか出来ない落ちこぼれの用なし能力者と理解した瞬間、一人が叫んだ。すぐに別の一人もそのあとを引き継ぐように、アスカを指差し、負けじと声を張り上げていた。
「能なしのくせしやがって!」
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