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こ奴と出掛けて?

「お……おう」  アスカは思わず呟いた。ぎりぎりで床に顔をぶつけずに済んだのだ。そこは男に感謝したい。しかし、片腕を掴んだまま離そうとせず、しかも完璧な無表情で見下ろされては、感謝の気持ちも萎えてしまう。というより、むかついた。その思いに、へらへら笑いをよりへらへらさせて、男を見遣った。気まずさから冗談めかしてもいたのだが、杓子定規な男にわかることではない。次の瞬間、ひょいっと持ち上げられ、片方の腕に乗せられてしまっていた。  男が本気を出したのなら女扱いも糞もない。こうした子供扱いも同様だが、男の手付きはあっさりとして、その点においては許せても、腹立たしさは消えないでいる。 「クソったれが!」  無駄と知りつつも、アスカはもがいた。 「放しやがれ!」  転げ落ちるのも構わずに暴れ回った。当然、男はびくともしない。それどころか一切を無視して真っすぐ前を向いたままに、こう言ってのけたのだ。 「こ奴と出掛けて来る」

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