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送ってくれんの?
「行ってらっしゃいませ」
そう答えたナギラの声がアスカの耳に明瞭に響く。従僕の山男達の頭を垂れて見送る姿も色鮮やかに望めている。瞬間移動をされていたのなら、そうしたことを気に掛ける余裕がアスカにはない。深奥にして神聖な森を駆け行く男の速度が緩やかな為に知れたことではあった。
「おっ……お?」
瞬間移動と思っていただけに拍子抜けがした。無視されることもだが、子供扱いされるのは尚もって許し難く、その腹立たしさから暴れたものの、あの怪しげな山の頂上に運ばれた時と同じとなると、やはり調子が狂わされる。頬を撫でる風の心地良さに、笑うのを止められない。
「ぐふふふっ」
笑いというには不気味なものでも、そこには楽しさが溢れる。からかい半分にまつわり始めた風に付き合うことも苦にさせない。アスカは悠々とした速さに爽やかさを思い、それで声音も明るくすんなりと、男にしてもらいたいことを口に出せていた。
「送ってくれんの?」
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