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こう叫んでいた?
「けど、あの山は……」
頂上を少し下ったのなら、闇の領域が広がっている。つまりそこは自然界の精霊が憩う侵すべからざる神聖な場所なのだ。人間だけでなく、精霊に寵愛される男だからこそ許されるのであって、モンスターでさえも容易には近付けない。そうした意味のみならず、男にとっては別の意味で侵すべからざる場所とも言えていた。精霊から与えられたまぼろしの女を、数百年のあいだ、ガラスの棺に入れて安置していた場所でもある。
その棺も今では空だ。昨日、男がまぼろしを手放したことによるが、長年の思いまで手放せはしないだろう。その棺を目印にアルファと待ち合わせるとは、嫌み以外の何物でもない。
「マジか?」
それでつい素直にそう言い直したアスカだが、まさかそこにヤヘヱが割り込んで来るとは思わなかった。腕時計にへばり付いたまま、口出しする機会を狙っていたのは間違いない。ヤヘヱはここぞとばかりにこう叫んでいた。
〝たわけが!〟
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