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同じ騒がしさ?

「光の先に……」  アスカの正しさは不意に響いた男の美声に裏付けられた。男は意図して〝精霊〟の二文字を省いたようだが、点滅する光を目指せば待ち合わせ場所に最短で行けるのが、はっきりしたのは確かなことだ。男が精霊のお節介にむかついているのを隠そうともしないことが、何よりの証拠と言える。平坦な口調であっても、そこには苛立ちが匂い立つ。 「アルファが待つ」  こうした場合、アスカは鬱憤晴らしに怒鳴ってやるが、杓子定規な男は自戒自制に走る。長年にわたる恩義に報いて、善意の押し付けにも従おうとする。これではアスカも息に紛れて笑うしかない。 「ふっふふ」  自然界の精霊も男とアルファの面談に興味津々といったところなのだろう。何をもってしての興味なのかは知りたくもないが、精霊に小突き回される男を思うと楽しくなる。その声が聞き取れないにしても、物に宿る精霊達のかしましさと同じ騒がしさは感じ取れるのだ。楽しくない訳がない。

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