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気紛れに運んで?

「ふふっふっ」  アスカの口から息が―――笑いが止めどなく漏れる。しかし、漏らせば漏らす程、点滅する光に吸い込まれて行くようだと、そう思った瞬間、アスカは光の中へと入り込み、さらに次の瞬間、あの怪しげな山の頂上を視界に映す。同時に、空になってもなお、未だ未練がましく置かれてある棺を目にし、その端に尻を載せて腰掛けるアルファを見た。  アルファは墨色のビジネススーツの上着を脱いで、真っ白なシャツの袖をまくり上げ、赤茶色にドット柄のネクタイも邪魔臭そうに緩めていた。上着は放り投げたかのような乱雑さで棺に掛けてある。全てに人狼らしい野性味に溢れ、上質さに彩られる男にはない粗暴さを思わせても、そこには男と同様の気品も窺える。 「やっとお出ましか」  男に聞かせる為だろう。アルファが不満げに呟いた。木の葉を揺らす風が、木々の囁きに溶け込ませようとして気紛れに運んで来たせいで、離れた場所のアスカにも聞き取れたのだ。

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