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運命が変わった?
〝如何にするか……〟
郡司の恐怖は目にした子が養子と知った時、さらに増した。神に捧げたはずの子が生きていては、大願成就を果たせない。郡司の地位はその足掛かりを掴んだに過ぎないのだ。それで考えた。夫婦の家は裕福だ。そこに目を付け、欲に駆られた者達をそそのかし、罪を子になすり付けることにした。
〝恩を知らぬ化け物ぞ!〟
郡司は叫んだ。夫婦は殺され、子は追われた。そして森の奥深く、ご神木の前で妖気と出会った。我が身に起きた秘密を教えられ、生きる為にとそれを受け入れた。復讐を思わず、弟の愛を信じて、子はチヲカテトスルモノへと変異した。
〝弟も!なれると言ったじゃないか!〟
兄への愛と親への思慕は別物だ。純粋な感情とは言えない。弟の魂はまったき闇に落ちる定めとなったが、またまたそこに、森に隠れ棲む人狼の迷い子狼が現れたことで、運命が変わった。子の内に潜んだ妖気の―――チヲカテトスルモノの祖の気紛れでもあった。
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