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噂にもなる?
「っうか……」
アスカは話の続きを思いながら、さり気なく咳払いをして、普段通りの調子に言葉を繋いだ。
「まぁ、なんだな」
肉の塊のアルファを見遣り、そして秀麗な顔立ちの男へと視線を戻して言った。
「アルファのさ、クソガキをハブりてぇって気持ち、俺にもよ、あんたとおんなじでさ、クソむかつくけど、わかってやれっぞ」
本当にその心情がアスカには思い遣れていた。まだまだ親が恋しい年頃のアルファに一途な愛を強いたのが間違いだ。そうしたヌシの身勝手さがアルファを人狼にした。これではアスカも仲良くしろと安易に言えない。青年との件も同じようなものだ。モンスター居住区に移住することも含めて、何を話したにしても、男がアルファと手を組めるというのなら、アスカも見ならうより他ない。
「けど……」
公然と男の子孫を名乗る一族の青年が姿を見せたのだ。噂にもなる。そうそう長くヌシをハブれはしないと、アスカにはそう思えてならなかった。
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