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愛は異常な程?
時代が変化する以前、人間とモンスターは別々の世界に生きていた。何かの拍子に交わることがあっても、偶発的な出会いに過ぎないでいた。元が人間のヴァンパイアや人狼にしても、生きるのに必要な限度でしか交わろうとはしなかった。そうした異形な世界にあっても、ヌシは共に生きたいとして、種族の違いに目を瞑り、弟を人狼にした。身勝手も甚だしい願いだが、だからこそ気軽には会えないのかもしれない。
時代の変化というような大義があれば、大手を振って会えもするが、アルファの周りに人間の能力者がいる状況ではそうも行かない。男からとはいえ、無用な懸念と知らされ、ほっとしていたのは間違いない。
「っうのに……」
男の子孫を名乗る一族の青年が『人間外種対策警備』に出向いて来た。アルファを―――弟を巻き込んだも同然で、ヌシが知れば怒り狂うのは目に見えている。ヌシの弟への愛は異常な程だ。恋敵の男とアルファが手を組むくらいに凄まじい。
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