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まんまの台詞で?
〝あなた様に……〟
五つの声を重なり合わせたような響きがアスカの頭に蘇る。
〝……渡しはしません〟
彼らはアスカに女を見て、妬ましさから言ったことだ。その言葉と共に白い輝きを黒影に変えて、男がアスカを使って整えた正しい道から外れて行った。魂にも許される自由意思で、霊媒に浄化されるという惨めな末路を選んだのだ。
それで思うのは青年の存在だった。霊媒である青年には生者も死者も丸裸に出来る。五人に憑依されたままの娘と向き合ったのなら、男の正体に気付けたとしても不思議はない。それなのに男には気に病む様子すらなかった。
〝先祖である私の肖像を有するというも、あれなるは贋物、私が何者であるかなど悟れはせぬ〟
男は美声を損なう程に感情的にそう言い切った。青年の前世には驚愕したようだが、驚き以外にないことは、プンスカしながら続けたこのまんまの台詞でわかりもするだろう。
〝あやつが家臣の生まれ変わりであったは慮外の至り〟
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