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風がすっと?
『人間外種登録変更制度』を利用するのは簡単だ。用紙に必要事項を書き込んで、申請するだけで済む。しかし、それで即、モンスター居住区に移住とはならない。能力の真偽と活用の検査が義務付けられている。その検査を請け負うのが『人間外種対策警備』であり、検査員の肩書を持つ職員のお墨付きがあって、やっとこさ許可されるのだ。
「あいつが……」
アスカは青年を思い、さらに続けた。
「マジもんの霊媒っうのに、間違いはねぇんだ」
検査員には人間の能力者もいて、モンスターに都合のいい検査ではないという証左の役目も果たしている。アスカの能力が人間には未知である為に誤魔化せたことも、青年には無理筋という訳だ。
「許可しねぇなんてのはさ、変に勘繰られて、痛くもねぇ腹、探られっしな」
言いながらアスカはアルファへと歩いた。その横を風がすっと吹き流れる。それが余りに自然で、次の瞬間、目にした男の後ろ姿をも違和感なく受け止めさせていた。
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