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見詰め返すだけで?

 男がアルファの眼差しに応えたのを意外には思えても、何故そうしたのかについてはアスカにも理解出来ていた。腕を掴むアスカの手を外してアルファと向き合った姿に、思考の端を感じたからだ。 「マジ……か?」  アルファの語り口調に溢れる親密さもさることながら、瞳に散らした黄金色の色彩でわかるように、アルファは男に対して興奮さえしてみせたのだ。男も応えざるを得ない。そうした二人の世界にあるものは、女を巡ってのバトルだ。そこに迸らせる熱量は凄まじく、この世に二人しか存在しない程に熱く激しい。しかし、肝腎要な女がいないのでは、その本質も互いの強さを競い合い、見せ付け合うといったものになる。  とはいえ、アルファも愚かではない。挨拶代わりに殴り掛かったりはしないだろう。それでも勿体付けた口調で近付かれては、男でなくとも警戒心が沸き起こる。 「けど……」  ここへは話をしに来た。男も見詰め返すだけで耐えているようではあった。

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