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今更ですか?
「クソったれが」
正直なところ、アスカは続けざまに介入して来た精霊にむかついていた。それを耳聡いモンスター二人に聞き取られては不都合と、喉の奥で唸るようにして罵ってやったのだが、それでも今回に限ってというのなら許せもする。アルファではなく、青年が口にした実際の言葉で聞きたかったからだ。
〝靄に覆われたようで、本当に不思議な感覚でしたよ〟
アスカは優しげで甘ったるい声音に耳を澄まし、本物と評判の魔女への興味を話す青年に意識を傾けた。
〝はは、あんなに可愛らしい男子が魔女だなんて……〟
目にしたことを話す青年の興奮気味な口調は快活で、整った顔立ちの好青年といった見た目通りの爽やかさを感じさせる。それが作り物というのがアスカには見えていたが、その場で驚きをもって聞き入っていたアルファにも気付けていたようだ。青年にもわかったのだろう。続く声音はどこかしら馬鹿にした調子に響いていた。
〝あなたには今更ですか?〟
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