「どうしようもないだろう？」 　瞬時にそう答えたアルファに男を気遣うといった気配はない。しかし、心持ちきつくしていた声音に、飄々とした明るさを照れ臭そうにまとわせたのを見ると、多少は気遣っていたようにアスカにも思えた。 「私はしがない人狼だからね、人間種社会に守られる彼には何もしないさ、けれど、こちらでやって行けるのか、わざわざ相談に来てくれたのだし、知恵は貸してあげたよ、霊視に失敗したくらいで途方に暮れるのなら、『人間外種登録変更制度』に申請しない方が無難、とね」 　そうした皮肉まじりな言葉の居心地悪さで追い払えるはずだった。ところが思い通りに青年を間抜けには出来なかった。元からその気はなかったと、軽く返されてしまったからだ。 「彼はね、帰り際にこう言ったんだ」 　この時、アルファの野太い声音が何故かアスカの耳には優しげで甘ったるく響く。 〝僕は自分が何者で、何の為に生まれて来たのかを理解しているんです〟