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能力者として?
「ふんっ」
それでもと、アスカは思った。当初の目的にアスカの存在がなかったとしても、男の登場によって、本物と評判の魔女に向けた興味が、探し求めていた女へと変わったのは確かなことだ。最終目的に男を据えているからこその興味なのだ。当然の結果ではあった。
青年が『人間外種対策警備』に来た理由が女というのでもわかる。人間種社会にとどまらず、モンスター居住区にも触手を伸ばした。何故ならそこには男がいる。しかし、時代が変化したとはいえ、ヌシを頂点とした組織に近付くのは難しい。男を使者に、わざとらしくアスカを呼び付けたヌシの懸念からして、試みたような気がしないでもないのだが―――。
「うーん」
精神を拘束されるヴァンパイアが、ヌシに内緒で事を起こすのは無理だ。糧になるという手もあるが、アルファさえ馬鹿にするような青年の選択肢になり得るとは思えない。となると能力者として、堂々と乗り込むより他に道がないことになる。
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