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本当に不思議な?

「けど……」  アスカに青年を責める気持ちはなかった。堂々と乗り込んだ先で、本物と評判の魔女と出くわしたのだ。落ちこぼれの用なしには叶わない夢だが、霊媒として同等であったのなら、アスカも能力戦とばかりに仕掛けていた気がする。自らに絶大な自信を持つ青年となれば、遣り過ごせる訳がない。前世から現世までの諸々全て、つまびらかにしたくなるはずだ。実際、青年はそうしたと、アルファも話していた。 「っうか……」  精霊が介入したことで、その時の様子はありのままに、優しげで甘ったるい声音でもってアスカの意識内に再生されていた。 〝靄に覆われたようで……〟  その例え通りに青年には何も見えなかった。そこに疑問をいだき、人間には本物と評判なのに、モンスター達には落ちこぼれの用なしとなる矛盾に気付く。ところが声音に暗さはなかった。胸に焦りや苛立ちを忍ばせていようが、興奮気味にこう続けていたのだ。 〝本当に不思議な感覚でしたよ〟

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