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夢見る世界に?
アスカが人間種社会に生まれ落ちてからの人生は、たったの十八年だ。両親の行き過ぎた愛に閉口しつつも、精霊達に小突き回されながら、喧嘩上等の充実した硬派な人生を悠々と生きて来た。そこに後悔はない。胸の奥深くに潜む女に絡まれることもなかった。モンスター居住区に移住して、占いの小部屋に男が現れるまで、前世とは無縁でいたのだ。当たり前ではある。高校卒業後に、占い師になれという精霊達の口車に乗った自分が悪いと言えば悪いのだが、これが偶然とは思えないアスカでもあった。
「てか……」
移住には満足していた。穏やかな暮らしに見合った新たな出会いに恵まれた。殆どがアスカの妄想としても、アルバイト風山男との刺激的で余裕に満ちたルンルンな日々を夢見ている。それで思った。女の後悔を解きほぐせたなら、男の魂の解放にも繋がる―――と。それには二人共にかかわる青年の問題を片付ける。そうすれば心置きなく夢見る世界に邁進出来る。
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