878 / 962
男にもアルファにも?
「小雀どもは……」
そう続けた男の完璧な無表情は凄まじいまでに完璧だった。眼差しに浮かべる厳しさも同様で、というのに声音だけはアスカ好みにうっとりと甘い。それでいて泰然とした口調は保たれ、言葉がさらりと繋がれる。
「……絶えずさえずる」
その上で男は完璧な無表情を微妙に緩め、笑顔らしきものにして、無視されたのに苛立つアスカを楽しむように結論めいたことを口にした。
「ああなるは致し方なし」
「ははぁ、そういうこと」
ヌシに感情を弄ばれないよう完璧な無表情を日常にした男と違って、死と隣り合わせながらも野山を駆け巡り自由に生きて来たアルファの表情はやたらと動く。それ程に寛いでいるということだろう。重々しげだった口調にも軽さを戻し、笑いを含ませる声音も純粋に明るくする。しかし、アスカにとっては苛立ちでしかない。男にもアルファにもむかつくばかりだ。自然と悪態が口を衝くのは仕方ないことではある。
「クソったれがっ」
ともだちにシェアしよう!

