881 / 962

毅然とするべき?

「君の精霊は本当にお喋りさんだからね」  肉の塊のアルファが可愛いというのもおかしな話だが、幼さと紙一重の間抜けさが優しい響きとなってアスカの思いを迷わせる。それでも人狼となった経緯を思えば、兄に甘える幼い弟の姿が浮かんで、頷けもした。 「聞こえないふりをされたくらいで、やめたりしないよね」  群れを率いているのだから、最強なのは間違いない。としても、こうした育ち良さげな喋りが野生に生きる人狼達には新鮮であったのかもしれない。アルファは人狼という群れの中で大切に育てられたのだろう。悠久の時を生き抜こうが、甘ったれという元々の気質をなくすに至らなかった。そう思って聞き入るのなら、説教臭くもある優しげな口調に苛立つのがアスカには馬鹿らしく思えて来た。  それにと、続けて思った。男との熱い世界の変化形を見せられているのだ。むかつきはしても、原因となった女扱いされないよう、ここは毅然と向かうべきところではある。

ともだちにシェアしよう!