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私を悲しませて?
「だから……」
ところがアルファに妙に可愛らしい口調で続けられ、調子が狂う。アスカには否定しようのない的確な問い掛けであり、相手にしない訳にも行かない。
「君もつい反応してしまうことがある、でしょ?」
それでアスカは答える代わりに毅然と見返してやったのだが、アルファには十分なようだった。厳しい眼差しで沈黙する男を意識してのことでもあるのだろう。野太い声音をわざとらしく弾ませ、話を継ぐ。
「君の独り言は本当に奥が深いな、普段から何気なく呟いておいて、突然叫んでもいつものことだと、人間達に聞き流させようというのだからね」
「ふんっ」
毅然と向かうのが、ただ話を聞くだけであるのなら、アスカには苦痛でしかない。拳に物を言わせたいのは山々だが、肉の塊相手ではまず無理な話だ。それならと、少しだけむすっとし、頭を使って口で勝負することにした。
「で、何?」
「ああ、君のその労力と苦悩がね、私を悲しませてならないのだよ」
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