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同じ理由で?
「うるせ、うるせ、うるせ」
アスカは子供じみた癇癪ついでに、立て続けに繰り返してやった。男が見せる厳しい眼差しへの反発もあったのだが、アルファの意見にむかついたからでもあった。もちろん精霊達を庇ってというのではない。日頃の鬱憤を一緒になって腐れるような関係にないアルファに、とやかく言わせたくなかったからだ。精霊達がろくでもない噂に狂乱しようが、そこには彼らを罵っていいのはアスカだけという特権意識が存在する。そうした感覚を拠り所に、アスカは最後にもう一度繰り返し、睨み付けてやることにした。
「うるせっ」
持って生まれた能力に振り回され、両親の愛情がなければ狂っていただろう幼少期を、精霊達は救ってくれた。成長し、硬派な日々を両親に知られることなく無事に過ごせたのも、彼らの騒がしい噂話があってのことだ。自分だけが持つ特権で感謝を口にしないとしても、そこに誰かをかかわらせるのは同じ理由で我慢がならない。
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