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使って欲しい?
「ふふっ」
アルファが意味深に笑った。それもまた、二人だけの熱い世界の一つなのだろう。アスカにはむかつくことだが、アルファの事情を理解して沈黙を破った男の邪魔をしたくはない。怪しい山の頂上で夜を明かさない為にも、ここは神妙にして、男の話に耳を傾ける。それでもむすっと頬を膨らませるのは止められないでいた。そこを咎めてなのか、男は完璧な無表情をどことなく不満げに崩して、やや早口に話し始めていた。
「霊媒など、我らには恐るるに足らず、君が有す能力に比べればな、我らが恐れてやまないもの、それを使うてもらおうと申すのよ」
「俺……が?」
アスカはこの世で唯一精霊の声が聞ける能力者だ。その能力をモンスター達は恐れた。時代が変化したこの現代に生まれ落ちたアスカを、〝落ちこぼれの用なし〟にした理由でもある。しかし、精霊の声はモンスター達にも聞けるのだ。つまりアスカに使って欲しい能力は、それとは別ということになる。
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