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噂に興じて?
「ってことは……」
まさかと思いつつも、アスカは男の言葉を脳内で反芻させた。
〝我らが恐れてやまないもの〟
その意味を自分なりに理解した時、怪しい山の頂上に連れて来て、何を頼もうというのかがアスカにも見えて来る。
「マジか?」
そう口の中で呟くが、それが正解と確信もした。詳細は不明だが、モンスター達を恐れさせたのだ。精霊の声が聞けるといった能力が如何に特異なものかがわかる。しかもアスカの能力はそれだけにとどまらない。これもまた詳細は不明だが、浄化も不可能となった死者の魂をまったき闇に落とせもする。
悪行の限りを尽くした魂だ。救いのない闇に落とされようが本望だろう。それ程の太々しさをもって世を恨んでいたという意味だが、人間が作り出した物に宿る精霊達がキャッキャキャッキャと噂に興じているくらいだ。今の世の中、感情を弄ぶのを好むヌシがつまらないと語ったように、魂の浮遊も浮世の気晴らし程度の彷徨いでしかない。
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