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問題ない?
「……だろ?」
アスカは自分に向けて呟いた。そして話題の中心にいる青年へと考えを巡らせた。青年は男の小姓をしていた五人の魂を痛め付けたが、それによって転生しにくくさせたとしても、その程度のことでヌシの気持ちは動かせない。嫌らしくあるだけで、死と引き換えてもといった覚悟を感じさせないのだ。前世に対する執着心にはそこそこ惹かれるかもしれないが、すぐに飽きるに決まっている。
「ああ、そうさ」
何より青年は生者であって死者ではない。アスカは続けてきっぱりと否定した。
「俺にゃ無理」
青年を死者にするというのは、魂を肉体から分離させることだが、モンスターには容易としても、それを隠匿するとなると、さすがに人間上位の現代では難儀なはずだ。そうした思いからアルファを疑わしげに見遣ったが、警戒するようなその眼差しに反応したのは男だった。どことなく不満げに崩していた無表情を微笑みに変えて、こう断言したのだ。
「問題ない」
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