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私を独りに?

 その時だ。大人の魅力たっぷりの比類ない美貌が、秋の傾き掛けた午後の柔らかな日差しを受けて、神々しい程に光り輝いた。自然界の精霊が喜び勇んで男の美貌を煌めかせたのだ。だからこそ、アスカにはこの麗しい美貌が楽しめないでいた。 「ったくよ」  アスカはむすっと呟き、棺の縁から尻を上げながら言葉を繋いだ。 「まぁな、俺に何をさせる気かはよ、大体のとこは察したぜ」  立ち上がったところで男とアルファに視線を定め、むかつく思いとは逆の穏やかさで続きを口にした。 「けど、こっちにゃさ、やるかどうかって前によ、話、付けなきゃなんねぇ奴らがいる、そこんとこ、あんたらにもわかんだろ?」  言い終わったあとは二人を無視して歩き出した。男が咄嗟に瞬間移動で近付こうとしたようだが、アルファに腕を掴み取られて動けずにいる。それを横目に歩き続けるアスカの耳に、少しも可愛くないアルファの確固とした声音が響いた。 「私を独りにするんじゃない」

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