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行くしかない?
アルファをアルファたらしめる力強い口調には、ふざけたところが全くなかった。理詰めで話を継いだのでもわかるというものだ。
「闇だぞ、行きに手出しされなかったからといって、帰りも保証されるとは限らない、おまえとは違うんだ、例えるにしては気色悪いが、私が人狼でなく、チヲカテトスルモノとしても、同じには扱われない」
「たわけたことを……っ」
二人に背を向けて歩くアスカだが、血相を変えてアルファを引き剥がそうとする男の焦りは見えていた。何を思っての拒絶なのかは謎だが、アスカにくっ付いて領域を抜け出たフジを思えば、アルファの不安は当然で、介添えを必要としないアスカよりも気遣ってやるべき相手に思える。それに怪しい山の頂上に運ばれて来たのが二度目のアスカには、闇の領域への案内も必要ない。ヤヘヱを残して置き去りにはされたが、どの領域からでも別荘の裏庭にひとっ飛びというのを確かめられたのだ。これはもう行くしかない。
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