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ヤヘヱは逆らわない?
アスカは〝離せ!〟〝離さない!〟と喚き合う男とアルファの喧騒を背中で聞きつつ、すたすたと闇の領域に向けて歩いて行った。仲のいいことだと嫌みったらしく思い、その気分のままにむすっと呟く。
「クソがっ」
〝うむ、うむ〟
しかし、口慣れた独り言に相槌を打たれるとは思わなかった。それがヤヘヱというのも驚きだ。側役と豪語するのに、アルファと揉める男を捨て置いて来たとは信じ難い。そう思いはしたが、すぐに気付いた。ヤヘヱは飲んだくれだ。絶好の機会を逃すはずがない。それでアスカは無駄と知りながらも、マントの肩先にへばり付く煌めきを指先で弾いてやったが、憎らしいことにひょいとかわされてしまった。
「くうっ」
わかっていても、悔しさの余りに自然と口調が激しくなる。
「あんたの大事な殿様がよ!ガキみてぇに騒いでんだ!いいのかよ!」
〝うむ〟
アスカの剣幕にヤヘヱは逆らわない。年寄り臭く煌めきを渋めにし、穏やかに話を継いでいた。
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