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危なっかしくて?
「……へぇ」
女を持ち出されては、アスカには他に返事のしようがない。ヤヘヱが素直であるだけに、逆に疎ましく思えてしまうのだ。というより、一瞬脳裏に、男のどうだと言わんばかりのしたり顔が浮かんで、がっくり来たというのが正しい気もする。
池の水抜きを手伝わせた者達と一緒に、泥まみれになったのがわかる姿ではあったが、父親と同年代と思うと、若々しくも生気に溢れたその美貌は衝撃的で、記憶に刻まれる。その反動からなのか、殴り倒したい衝動に駆られるが、胸の奥深くに宿る女の思いと同調したようにも感じて、どうにも気分が盛り上がらない。
「てか……」
アスカは落ち込みそうな心を奮い立たせようと、口調を僅かに強めて言葉を繋いだ。
「側役だろ?んな勝手、許されんのか?」
〝事後報告じゃろうが、気に致されぬよ〟
ヤヘヱにはさらりと返された。
〝そちは危なっかしくてならなぬからの、我らが殿とて、一人に出来ぬこと、存じておられようぞ〟
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