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肩先を見遣った?

「な……っ!」  アスカは悔しかった。咄嗟に声が出たのはそのせいだ。威張りたがりの小心者にジジ臭く諭すように言われては、むかつきもする。とはいえ、このまま別荘に連れ帰りたくないと、そう思ったところで無駄なこともわかっていた。個性を持ったはぐれ者でも、ヤヘヱは人間が作り出した物に宿る精霊だ。マントの肩先にへばり付くのを振り落とせはしない。 「うるせ!」  仕方なく怒鳴った。 「精霊もどきの腐れ野郎がよ!」  罵倒もしてやったが、そこで闇の領域に入ったせいか、ヤヘヱのジジ臭い返しも怪しくなって来た。 〝にゃんにょぉぉっ〟  ちびりちびりと杯を重ねたといった風ではない。ぐいっとあおって、しかも立て続けに何杯か飲み干したあとのようだ。意味不明な言葉が楽しげに続く。 〝みりゃいじゃまぁ、我りゃぎゃじょにょをおじゅぐりぐじゃじゃれまじじぇ、やじぇゑば、うじぇじゅうじぇ、なじぇばじぇにゅぅぅ〟  アスカは絶句気味に肩先を見遣った。

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