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真新しくて?
「……だな」
精霊との付き合いには遠慮がない。思春期に始まる気恥ずかしさも、つつがなく覗き見られている。闇に心を読まれたからといって、気にする程のことではないのだ。むしろ気遣う必要がないとわかったのだから、気楽と言えた。それに心が読めるのなら、話を付けようというアスカの思いも理解していることになる。要するに既に答えは出ていると、アスカはそう思いながら玄関へと回り込んだ。
「お……っ」
ところがポーチに目を向けた瞬間、驚きに声が詰まった。そこにはヌシがいた。ポーチの柱にもたれて、アスカに微笑み掛けていたのだ。
ヌシは薄いグレーのロゴ入りスウェットの上下という軽装でいたが、アスカの普段着にあるようなしょぼくれた古着感は一切なかった。粗野な雰囲気を匂わせる少し長めの艶やかな黒髪を隠すフード付きの、十代半ばに見える細くたおやかな体付きをしっとりと包み込むそれは、雑誌から抜け出たように真新しくて煌びやかだ。
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