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入り込まれて?
「こんにちは」
ヌシの笑顔がアスカには薄気味悪く思えたが、丁寧な挨拶となると、さらに不気味で怖気を震う。
「待ってたんだ」
アスカが身震いしたのに気付いていたとしても、ヌシの様子にそういった気配は全くなかった。少し生意気だが、口調にも見た目通りの可愛らしさがある。しかし、それを信じるくらい、間抜けなことはないはずだ。今までどこにいたのかを示唆する嫌らしさが、アスカにはしっかりと見えていた。
男とアルファの苦心もヌシに筒抜けだった訳だ。そこをわざわざ聞き返しては時間を無駄にする。というより、アスカが話し掛けでもしたのなら、変態屋敷に呼び付けた時のような傲慢さで、居座られそうに思えたからでもある。
「ふんっ」
アスカは苛立たしげに鼻を鳴らして、ヌシを横目に、玄関のドアを開けて中に入った。そのままヌシを締め出すつもりでドアを閉めたが、ヌシには瞬間移動がある。はっとした時には、奥へと入り込まれてしまっていた。
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