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ヌシもまた?
ヌシは占い用の小部屋や受付に興味がないのだろう。仕事場に改装したリビングルームを通り抜け、それと一体型の間取りに替えたダイニングルームのソファに、気付けば見た目通りの可愛らしさでちょこんと腰掛けていた。アスカにすれば、自堕落に過ごす生活空間を瞬時に乗っ取られたことになる。苛立ちは最高潮だが、それでもこの状況を受け入れるしかないのもわかっていた。
「ク……ソっ」
精霊達が魔法を掛けて守っていた可憐で夢見がちな外観は、内装にも生きている。女性客が大半の占いの仕事にはぴったりのふわふわした作りで、母親を大いに喜ばせたものだ。毛むくじゃらな山男を理想とするアスカには軟弱過ぎてこそばゆくてならないが、それに合わせて母親が整えた愛らしさに文句は言えない。ところが面白くないことに、よれよれスウェットで寛ぐアスカの姿は一種異様な様子というのに、男がそうであったように、ヌシもまた違和感なくそこに溶け込んでいた。
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