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主人そのもの?

「……っ」  苛立ちに妙な羨ましさを感じたからなのかもしれない。アスカは思わず唸っていた。細くたおやかな体付きをしていても、ヌシはヴァンパイアだ。肉弾戦はもっての外で、さらに〝こちとら硬派だ、見栄を気にして着飾れるか〟と、そう粋がってみても、洒落者のヴァンパイアが相手では負け確定だ。となると諦め気味にもう一度悪態を口にして、取り繕うくらいのことしかアスカには出来ない。 「ふ……ざけっ」  そして両親が気に入って持ち込んだ座り心地も最高の三人掛けのソファを、最初に汚した男を思って続けた。 「……やがって」  ソファの前には家族団欒の場に相応しいテレビチューナー付きの大型モニターが設置してある。そこに男は株価チャートを映して、精霊達のかしましい喋りをお囃子に、悠々と眺めていた。両脇に母親好みの薄紅色の小花柄のクッションを控えさせていようが、ソファの中央に陣取る様子は、空間においての主人そのものでもあったのだ。

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