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同じでないこと?
ヌシもアスカの目には男と同じに映っていた。ソファの中央に陣取らず、小花柄のクッションにもたれるようにして行儀良く片端に座っているが、空間を支配しているのは確かなことだ。アスカにはそう思えてならないのだった。
男は今朝がた遣って来た。結果、せわしい一日にされたのだが、締めくくりにヌシの顔を拝ませられるとは、何とも因果な日ではある。どちらもアスカの都合を無視してのことで、そうした自己中心的な思考も、ヴァンパイアへの変異に求められる要因なのかもしれない。純粋で激しい感情というものは、言い換えるのなら、途轍もなく身勝手となる。
装いの違いに意味はない。茶色系の洒落た色合いのスリーピーススーツの男に対し、ヌシは薄いグレーのロゴ入りスウェットの上下という軽装だが、男同様に、母親が整えた愛らしさに溶け入り、そこに主人としての匂いを立ち上らせている。
「けど……」
全てが同じでないことは、アスカにもわかっていた。
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