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美中年だ?

「……だろ?」  アスカはヌシを気にして小さく呟いた。男には精霊の寵愛がある。その加護によるものと認識するが、ヌシとなると疑問が湧く。ヌシに対する態度を見ても、自然界の精霊は気にする風なく泰然とし、物に宿る精霊達は騒がしくしつつも本気で怖がっている。そこに加護を思うには無理がある。チヲカテトスルモノの祖の力によるとしても、精霊の加護との違いがわからないのでは、答えとするには弱々しい。それでも際立つ美貌が関係しているのは間違いないことに思えた。  美貌というのなら、男が最上であるのは贔屓目ではない。しかし、家族団欒という同じ場所に、男とヌシ、二人共に同じ状況で溶け込む姿を目にし、アスカはヌシの美しさが男をも上回るのを理解した。 「っても……」  アスカの好みはクソ生意気な美少年ではない。アルバイト風山男への浮気心はさておいて、元来は殿様気質のクソ忌々しい美中年だ。そう胸のうちで思いながらヌシへと近付いた。

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