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ヌシの思いが?

 男とアルファが愛にも似た二人だけの世界に浸るのを、アスカも何度か目にしている。ヌシの話にも頷くしかないのだが、だからこそ、憎々しげに顔を顰めてやった。それを笑うヌシに嫌らしさはない。見た目通りの少年らしい純粋さを、未だ心に残しているというのかもしれない。しかし、それも泡沫の夢でしかなかった。 「ただ……ね」  次の瞬間には子供っぽい口調の端々に、梟雄じみた冷たさが滲み出されていた。 「あの子がしようとしてるのは、チヲカテトスルモノの祖に願わなきゃ出来ないことなんだ、キイじゃなくて僕を頼らなきゃなのにね、だけど僕を頼るなんて絶対無理、ホント、困った子だよ、これもみんな霊媒の彼、キイに謀反した家臣の生まれ変わりの彼が現れたから、でしょ?お兄さんに転生した彼女の魂を追い掛け回す執念は凄いし、僕もそこは嫌いじゃない、だけど……」  アルファに近付いたのが間違いと、そうしたヌシの思いがアスカには感じ取れていた。

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