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愛には愛?
「てか……」
それもヌシによると、チヲカテトスルモノの祖に願わないと履行出来ないことになる。男がいみじくも表現した〝我らには踏み込めぬ領域〟とは、アスカにも言えることだったのだ。
「けど……」
釈然としない思いがアスカの胸に広がった。
「闇も自然界の精霊、なら……」
まったき闇にしても闇と付く以上はお仲間のはずと、アスカはそう続けた。ヌシには軽く頷かれただけだったが、気にしないでおく。
「っうと……」
唸るように呟き、まったき闇について再考してみることにした。そこには悪行の限りを尽くした死者の他に、ヴァンパイアへの変異に失敗した者の魂が闇と同化するように存在する。それ以外にも変異に成功したヴァンパイアの唯一の願い―――恨みや妬みによる憎き相手の魂も取り込まれている。
〝変異に忘れてならぬは対となる魂ぞ〟
そしてふと脳裏に浮かんだ男の台詞にはっとし、続きを思った。
〝恨みには恨み、妬みには妬み、愛には愛、とな〟
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