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彼らが怯える?
「そういやぁ……」
アスカは男が続けてこうも言っていたのを思い出した。
〝願うは死、求むるは魂、果報によりて免れたる代償に、変異をなせずに落ちた者が行く闇へと落とすのよ〟
遥か昔、モンスターとの戦いにおいて、強敵であったヴァンパイアを滅する為、アスカのような能力者は、代償として闇に捧げられた者達の魂を解放し、相対する変異者の肉体を霧散させた。不老となったことで凍り付いたヴァンパイアの魂も、肉体をなくせば浮遊する。解放された魂に代わって、浮遊する彼らの魂が取り込まれるのは必定だ。変異に失敗した者達のように、悪行の限りを尽くした死者と共に、まったき闇に縛り付けられることになる。
愛によって変異した男以外のヴァンパイアにとって、これ程に恐ろしい話はないはすだ。ヌシにすれば手足をもぎ取られるようなものだろう。そうした能力を持って生まれたアスカを忌避したくもなる。完全無欠な彼らが怯えるのは当然ということだ。
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