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あんた……?

 まったき闇がどういった経緯で生み出されたのか、アスカにはわかっていない。自然界の精霊は寡黙だ。時代が変化する際にモンスターと交わした約束のこともある。聞かれもしないのに自ら進んで話したりはしない。アスカも〝落ちこぼれの用なし〟と呼ばれる通りに放っておいたが、それでもこうしたヌシの訪問に、精霊が示す理解への始まりを感じてならない。  チヲカテトスルモノはヌシという依り代を得たことで、自然界の精霊にはない異能を蘇らせた。アルファの過去で見たように、その気になったのなら、生者と死者の魂の交換を可能にする。しかも気紛れでしていたのを知ってしまっては、そこにかかわる者として見ると、余り関係したくないように思えた。 「うーん」  アスカはヌシを横目で眺めた。気紛れはヌシにも言えることだ。アルファの為とはいえ、こうして話しに来ている。 「あんた……」  そのまま素直に美少年らしい可憐な横顔が思い付かせたことを口にした。

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