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台詞が浮かんで?
「お兄さんは……」
アスカがむすっとしていたからだろう。ヌシは子供っぽい調子に戻って、弾むように話を継いでいた。
「僕と違って転生だからね、それって時代が求めた救いの存在って意味にもなるんだよ、僕の方はチヲカテトスルモノの祖を受け入れて、変異を成功させたことへのご褒美だから、僕自身の運の良さでしかないんだ、お兄さんは他人の幸せの為にいるけど、僕は自分の幸せの為にいるってこと、ホント、僕を弟にって言ってもらえて嬉しいんだけどね、存在する価値っていうのかな、そっからして全然合わないじゃん、だから、うん、無理だよね」
「うるせ、クソガキがっ」
長々しいヌシの嫌みにイラついて、つい憎まれ口を叩いたが、怒鳴ったりはしていない。話に耳を傾けながらも、他のことを考えていたせいか、呟き程度になっていた。
〝変異は果報……〟
この時、アスカの頭には変異について語った男の台詞が浮かんでいたのだ。
〝……偽りなくば報われる〟
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