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愛される理由?

 男の台詞を思ったからだろう。アスカにも気付けたことがある。光と闇は表裏一体だが、その様相が真逆なように、噂好きでかしましいアスカの精霊達に対して、ヌシが身に宿したチヲカテトスルモノの祖は気紛れでありながらも冷静沈着に物事を進める。ヌシとの出会いで見事に復活を遂げたようにだ。そして善悪を問わないのはそのままに、より純粋で激しい感情を求め、さらには変異に失敗した魂の捨て場所にまったき闇を使うといった抜け目なさも見せた。 「あの日、あの子が変異に失敗した時、チヲカテトスルモノの祖にしたら、僕の願いなんて知るかってとこで……」  身に宿したとしても許される願いは一つのみ、それをチヲカテトスルモノの祖が気紛れに違えた。アスカも聞き知っていることだ。 「何もかも迷い子狼のお陰だね、僕って運がいいからさ」  そう笑って言えるところが、チヲカテトスルモノの祖に愛される理由と、そこに間違いがないことはアスカにもわかる。

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