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アスカも同じ?

「っうと……」  アスカはヌシを思って胸のうちで続けた。 「クソガキが正しいってこった」  モンスターと共存するこの時代に生まれ落ちたアスカを、ヌシが〝特別〟と呼ぶのは当然ということだ。しかも胸の奥深くに宿る魂には、女の記憶が内包されている。アスカには認め難い話だが、ヌシが不満を募らせるのも、また当然ということになる。 「だからね、お兄さんなんて」  物思いに耽っていたアスカが、ヌシには無視されたように思えたのだろう。というより、アスカの嫌々ながらの理解が読み取れたといったところなのかもしれない。アスカの気を引くかのように声音を高くしたヌシの口調は、癇癪を起こした子供に似て、鬱陶しくあった。 「ホント、いらない存在なんだよ」  そう口にしてみても、アスカの誕生に意味がなかったと、ヌシが本気で思っているとは思えない。その事実にむかついているだけのことなのだ。アスカも同じ気分でいるのだから、間違いないと言えていた。

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