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腐っている?
仕方なしにとはいえ、ヌシは精霊と交わした約束を取り消すかのように出向いて来た。クソったれオヤジ二人のクソ忌々しい頼み事のせいだが、内々の秘密にされた内容が明かされたところで、アスカが〝落ちこぼれの用なし〟であるのに変わりはない。となると、ヌシの突然の訪問には精霊の思惑もあったことになる。仰々しく秘密にされた内容は、今生でのアスカの使命の役には立たないということだ。魂の解放に能力はいらない。能力者への転生も、男に近付かせる為の方便だった。
「くうぅっ」
精霊が約束に隠した本当の意味がわかり、アスカのむかつきがさらに増した。それの何が面白いのか、ヌシには笑われた。しかも話は終わったとばかりに立ち上がっている。少し前には癇癪を起こしていたと思うと呆れてしまうが、ヴァンパイアは何かに付けて行動が性急だ。瞬間移動が脳味噌に与えた弊害だろう。腐っているのだ。そう思えたことで、アスカの最悪な気分も静まった。
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