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誰憚ることがない?

 ヌシにもわかっていることなのだろう。精霊達が間抜けな男二人の物に宿って、変態屋敷の応接室に入り込んだ時のことを思えば、嫌でもわかる。彼らは悦に入った口調で男二人の会話を再現し、多少大袈裟ではあったが、事実のままに喋っていた。ヌシにとっても、満足の行くものだったに違いない。ところがアスカを前にすると、彼らの様子も途端に変わる。  事実であるのは同じとしても、色恋を中心に、ろくでもない噂ばかりを喋くりまくる。占いの仕事にはまぁまぁ役立つが、彼らの好みが修羅場であるせいか、知りたい情報に辿り着くのに時間が掛かってしまうのだ。 「で……」  そういった態度の違いを思って、アスカは続けた。 「せっつくと、ムキになりやがるしよ」 「あははっ」  男が苦々しげに〝小雀ども〟と呼ぶくらいだ。間抜けな男二人共々に追い払われたあとの怒号でもわかる。ヌシには神妙であっても、ひとたび騒ぎ出した精霊達のかしましさは誰憚ることがない。

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