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はしゃいでいる?

「クソったれがっ」  自分の間抜けさにむかついて、髪をかきむしってみても始まらない。まだ話の途中というのに、ヌシには易々と逃げられた。わかっているが、自力でどうにかしろと言われたようで、腹が立ってならないのだ。  男もそうだったが、ヴァンパイアは瞬間移動でドアを自由にすり抜けられる。ヌシも開け閉めする音を全くさせずに、別荘から姿を消していた。その事実に反発しようが受け入れるより他ない。アスカはぼさぼさになった髪をさらに乱して、ソファにだらりと体を預けた。 「っうか……」  ヌシがいなくなって、突如、騒ぎ出した精霊達には嘆息しか出ない。ヌシがいるあいだは遠巻きにして息を潜めていたのに、いなくなったと同時に騒ぎ出されては、嘆きたくもなる。ヌシと交わした約束が取り消されたことで、はしゃいでいるのだ。彼らはチヲカテトスルモノの祖についてぺちゃくちゃぺちゃくちゃと、彼らなりの思いに沿って好き放題に喋り合っていた。

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