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口調とは裏腹に?

「あはははっ」  アスカにすれば割と本気で返していただけに、それを笑って楽しむ青年のなめ腐った態度にはむかついた。それでも食って掛かるような場面でないのは、アスカも理解することだ。 「で……?」  そうした返しも、アスカには口慣れたものだった。相手にどう思われようが気にしない性分が言わせる台詞であり、今回も留守番に何の用があるという意味を、その一言に込めての促しだった。それが青年の耳には太々しく響いたのかもしれない。爽やかさに見合った明るい笑いをひとしきり響かせたあと、笑いに喉が掠れたとでもいうように、甘ったるい口調に苦みを含ませ、答えていた。 「君と同じ顔の可愛らしい魔女に会えないなんてね、本当に残念、けれど……」  そこでさらに一歩進み出て、苦みの増した声音で軋ませるようにして続けた。 「僕には嬉しい誤算さ」  そして言葉通り、耳障りな口調とは裏腹に、青年の顔には白々しくも優しげな笑みが貼り付けられていた。

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